2025年、日本国内の米価格が過去に例を見ない高騰を続けています。

飲食業や小売業、食品メーカーにとって、主原料である米の価格上昇は収益を大きく左右する深刻な課題です。

本記事では、価格高騰の背景と今後の見通し、企業が取るべき具体的な対応策をわかりやすく解説します。

2024年から2025年にかけて、日本国内の米価格は記録的な高騰を続けています。

猛暑による収穫量の減少、外食需要の回復、そして世界的な食料需給のひっ迫など、複数の要因が重なっています。

飲食業や食品メーカー、小売業にとって、原材料価格の上昇は収益を直撃する大きなリスクであり、早急な対応が求められています。

2025年4月時点で、白米5kgの全国平均小売価格は4,000円を超え、前年同月比でおよそ2倍に達しています。

卸売市場でも価格の上昇が続いており、業務用米や外食産業向けの特定品種（コシヒカリ・あきたこまちなど）は品薄の状態です。

農林水産省の「米の需給見通し」によれば、2024年の作況指数は全国平均で「97」となり、平年作（100）を下回りました。

特に関東・中部・近畿地方では「不良」と判定された地域もあり、今後の供給の安定性に不安が高まっています。

・天候不順・自然災害の影響

2023年夏の記録的な猛暑は全国の水稲に深刻な影響を与え、登熟不足や白未熟粒の増加による品質低下、ならびに収量減につながりました。

これが2024年産米の供給量不足と価格高騰の直接的な要因となっています。

・国際市場の需給ひっ迫と輸出規制

インドやタイなど世界有数の米輸出国では、異常気象や食料安全保障を背景に、相次いで輸出規制を強化しています。

これにより国際的な米の需給は逼迫し、日本国内における長粒種米の輸入価格も大幅に上昇しています。

・生産コスト・物流費・為替の影響

肥料や燃料といった生産資材の価格上昇に加え、円安の進行が農業経営のコストを押し上げています。

これに伴い、農家の出荷価格は上昇し、加えて2024年問題による物流費の増加も卸売価格へと転嫁され、最終的に小売価格に影響を与えています。

・外食・惣菜業者の対応事例

米の価格上昇は、外食チェーンや惣菜メーカーにとって深刻なコスト圧迫要因となっています。

価格転嫁の判断が難しいなか、品質を維持しながら調達コストを抑える工夫が求められています。

具体的には、カリフォルニア米と国産米のブレンド使用や、もち麦・雑穀などの代替素材を一部使用するなど、原材料の調整によってコストを吸収する企業が増えています。

・小売業での商品ライン強化

小売業においても、消費者の節約志向に対応する動きが進んでいます。

たとえば、無洗米・規格外米・小容量パックなどの商品ラインを拡充し、手軽さや価格面での魅力を訴求することで、買い控えを防ぎながら売上維持を図る取り組みが見られます。

・輸入米の具体的戦隊て活用事例と留意点

輸入米は、国内産米に比べて比較的安価に調達できることから、原材料費の高騰対策として注目されています。

ただし、食味や食感が異なるため、炊飯用としては敬遠されやすく、用途が業務用や加工用に限定されるケースが一般的です。

一方で、以下のような形での活用が進んでいます：

• ・国産米とのブレンドによる外食向け利用
• ・おにぎりや冷凍炒飯など加工品への使用
• ・自社PB商品における長期契約による安定調達

このように、目的に応じたブレンドや加工用途であれば導入のハードルは下がり、価格抑制につながる実用的な選択肢となっています。

・輸出規制・関税リスクの理解

輸入米の調達には、国際的な供給リスクも伴います。

たとえば、インドでは自国の食料安全保障を理由に輸出禁止措置を実施しており、こうした動きは供給の不安定化につながります。

さらに、日本側の制度としても関税の壁があります。

たとえばアメリカ産米の場合、関税枠を超えると1kgあたり100円以上の高率関税が課され、輸入によるコストメリットが帳消しになる可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、企業は調達先の多様化や長期的な契約設計、関税制度の理解といった戦略的な視点が不可欠です。

2025年の米価格高騰を受け、企業の間では仕入れ体制や調達戦略の見直しが急速に進んでいます。

特に、中小企業を中心に、調達の安定化とコスト抑制を両立させる具体的な取り組みが広がっています。

 複数ルート確保と共同購買

安定供給と価格変動への対応を目的として、多くの企業が以下のような策を講じています：

・契約農家と仲介商社の併用によるリスク分散と安定調達

・中小企業同士の共同購買によるスケールメリットの活用

・産地直送スキームの導入による物流効率の向上と鮮度確保

これらの取り組みにより、原材料の安定確保とコスト最適化の両立を図る動きが強まっています。

加工米・代替素材の活用提案

調理現場での負荷軽減や食材ロスの削減に向けて、以下のような施策が採られています：

・炊飯済み冷凍米飯の導入による調理時間の短縮と効率化

・雑穀やもち麦とのミックス販売による商品の付加価値向上と価格抑制

・内容量やセット構成の工夫による価格転嫁への柔軟な対応

このような代替素材の活用や商品設計の見直しは、価格変動リスクを一部吸収するうえで有効です。

農林水産省では、米の安定供給と価格抑制を目的として、以下のような緊急対応策を順次打ち出しています：

・備蓄米の特別放出（2025年：30万トン）
　価格急騰への対応として、需給調整を目的に市場へ供給

・業務用米の購入に対する助成制度（自治体単位）
　外食・中食事業者の経営負担軽減を目的とした一部補助金支援

・物流費・冷蔵保管費の支援制度の活用
　2024年問題への対応として、共同配送や保管インフラ整備を後押し

企業側はこれらの制度に対して早期に情報を収集し、補助金の申請や対応体制の整備を戦略的に進める必要があります。

米価の上昇に伴い、消費者の購買行動にも以下のような変化が見られます：

・小容量・低価格帯パック米へのシフト（家計管理意識の高まり）

・無洗米や長期保存が可能な商品へのニーズ拡大（調理の手間と備蓄意識の両立）

・外食から中食・内食への移行（節約志向と家庭回帰の傾向）

こうした動向を踏まえ、事業者は商品ラインナップの再構築や販売促進手法の見直しに早期に取り組む必要があります。

2025年後半以降も、猛暑による作況不良や国際的な輸出規制のリスクは継続する見通しです。

これにより、米価が短期的に下がることなく高止まりする可能性が指摘されています。

企業が今から取るべき備えとしては、以下のような対応が挙げられます：

・在庫の最適化と発注タイミングの分散
　突発的な需給ひっ迫にも対応できるよう、計画的な調達体制を構築する

・海外調達のリスク評価と試験輸入の実施
　用途を限定しながら輸入米を検証し、中長期的な調達先候補を確保

・契約条件の見直し（価格変動条項などの導入）
　継続契約における価格リスクを軽減するための制度整備を検討

将来の供給不安やコスト上昇に備え、企業の購買・調達戦略は柔軟かつ長期的な視点で設計する必要があります。

増える問い合わせの背景

2025年の米価高騰を受けて、「海外から安く米を調達できないか」といった問い合わせが、さくら代行にも増えています。

特に、タイ米やカリフォルニア米などの業務用輸入に関心が集まっていますが、米の輸入には他の商品とは異なる高度な法規制と手続きが求められます。

米輸入に関わる主な法規制と手続き

米を輸入するには、以下の複数の法令と行政手続きの遵守が必要です。

いずれも違反時には輸入差止・廃棄・罰則対象となるため、厳格な管理が求められます。

関連法令と主な規制内容

• ・食糧法・関税法
  　商用輸入には政府による納付金制度や、特別枠での申請が必要です。
• ・植物防疫法
  　輸出国政府発行の検疫証明書が必須。未取得や内容不備は積戻しや廃棄命令の対象になります。
• ・食品衛生法
  　販売目的の場合、輸入届出と残留農薬検査が義務です。指定港以外での通関は原則不可。

これらの手続きには、輸入の専門知識に加え、保管・品質管理・通関管理体制の構築が求められます。

個人輸入における制限とリスク

個人使用を目的とした米の輸入は、一定の条件下で認められる場合がありますが、以下の制限があります：

・1回あたり20～30kg以内、年数回程度であれば、比較的スムーズに通関されることが多い

・年間100kg以下が「自家消費」の上限とされており、反復的な輸入や転売を疑われる行為は商用扱いとされるリスクがあります

・商用と見なされた場合は、20万円以下の過料が科されることもあり、植物検疫法違反として処罰の対象にもなります

また、届出や検疫証明の不備によって通関で止まり、廃棄費用が発生するケースも報告されています。

慎重な判断を

米の輸入は制度上も実務上もハードルが高く、検疫・通関・保存・販売管理のすべてに専門知識が求められる分野です。

十分な準備なしに着手した場合、違法輸入と判断されるリスクや、通関不可による在庫廃棄といった深刻な損失に直結する可能性があります。

特に、「他の商品と同様に簡単に輸入できる」と誤認して安易に始めることは、非常に危険です。

さくら代行では、現在米の輸入支援には対応しておらず、今後も慎重な判断を推奨しています。

米の価格高騰は一過性の現象ではなく、気候変動、国際的な需給バランスの変化、国内農業構造の課題といった複合的要因による、中長期的な経営リスクです。

企業としては、以下の対応が急務といえます：

• ・安定供給のための調達ルートの多様化と契約条件の見直し
• ・消費者ニーズに対応した商品ラインアップと販売戦略の再構築
• ・政府の補助制度や金融支援の積極的な活用
• ・炭水化物代替商品の導入や備蓄戦略の整備

また、米の輸入を検討する場合には、関係法令の厳守と高度な実務対応力が求められます。

さくら代行にも多くのご相談をいただいていますが、米など高度に規制された品目の輸入支援には現在対応しておらず、慎重な判断が不可欠です。

本記事が、企業における価格高騰リスクへの備えと持続的成長の戦略を見直す契機となれば幸いです。